パートナーの性格は自分のとらえ方次第
熱愛を経て結婚したカップルでも、夫婦生活が長くなるとお互いに不満が蓄積していくものです。
離婚相談を受けていると”そんなに相手の行動がいちいち気に入らないなら、なんで結婚したの?”と聞きたくなるようなケースも少なくありません。
交際時代には全く気づかなかった習慣の違いにイライラすることもあります。
生活を共にするまでは、歯磨きの回数、洗面台の使い方、寝起きの悪さ、疲れた時の態度など、気に留めたことがなかっただけに許容できないのです。
生まれ育った家庭が違えば、細かい生活習慣も異なるのは当たり前のこと。
しかしその習慣が気になりだすと、どんどん相手の存在自体が嫌になってきてしまうのです。
結婚前後で本当に変わってしまう行動もあります。
セックスはその代表的なものでしょう。
たまにしか会えなかった時は会う度に求め合い盛り上がっていたのに、結婚生活が長くなると、おざなりな愛撫から射精まで数分といった義務的な行為と化し、全くつまらないものになってしまうのです。
セックスレスの大きな原因として、このマンネリによる手抜きがあります。
パートナーを見る目が変わる
また、パートナーを見る自分の目が変わっただけなのに、パートナーが変わったと思い込んでいることもよくあります。
パーソナリティは良くも悪くもとらえることができます。
同じ性格でも、
慎重=臆病
行動的=無謀
柔和=優柔不断
リードしてくれる=自分勝手
など、正反対の言葉で表現できます。
かつては素敵だと思っていた相手の性格が、時を経て冷静になると欠点に見えてしまう。
これは誰にでも起こりうることです。
しかし急に欠点に見えてきたからといって「気に入らない」と批判し出すのでは、何度相手を変えても同じ結果になってしまいます。
離婚相談を受けていると、”パートナーが変わったのではなく、あなたの見方が変わっただけなのでは?”と言いたくなるケースがたくさんあります。
再婚相手に選んだのは真逆のタイプ
よくあるケースをご紹介します。
(個人が特定できないよう複数の事例を加工してあります)
会社員の男性Aさん(47)は8年前に離婚調停を経て離婚し、2年後に再婚、そして5年後にまた離婚を考えていました。
その経緯はこんなものでした。
初婚は29歳の時、相手は友人主催の飲み会で知り合った同い年の女性でした。
公務員の父と専業主婦の母に育てられ、年の割に保守的な価値観を持っていたAさんが妻に求めていたのは「家庭をしっかり守ってくれる良妻賢母」でした。
内気でおとなしく家事上手の妻はAさんの理想像にぴったりでした。
しかし結婚後数年経った頃には妻への不満がたまっていました。
妻は神経質なところがあり、少しでも汚すと顔色を変えて掃除を始めます。
息子にも同様で、過剰に厳しく躾けるため、子どもがいつも委縮するようになりました。
料理はおいしかったものの、いつもどこかしらピリピリした雰囲気があったため寛いで食べることができません。晩酌も嫌がるし、食後にダラダラとリビングで横たわっているとさっさと先に寝てしまいます。
当然セックスも”不潔な行為”として、拒否こそしないもののイヤイヤお勤めを果たすという雰囲気ななので、ちっとも楽しくありません。
致命的な欠点とまではいかないのですが、Aさんは次第に妻と一緒にいることに疲れてきて、家が安住の地ではなくなってしまいました。
小学受験をさせたい妻と、のびのび育てたいAさんとの間でかなりの言い争いをしたのち、結局Aさんが折れて私立に入学させましたが妻の教育熱は高まるばかり。すべての情熱を息子に注ぎ、Aさんは無視されるような形になりました。
その頃から妻の潔癖がエスカレートして、Aさんが帰宅後にスリッパをはかずに廊下を歩いただけでヒステリックに廊下を拭き掃除する妻の姿に嫌気がさし、最終的にはAさんから離婚を申し出たのでした。
Aさんは大手企業の社員で高収入ではありましたが、慰謝料と養育費で生活は楽ではありません。
しかし独り身は侘しいし、まだ当時は39歳で、恋愛もセックスも諦めたくない思いが強かったので婚活サイトで再婚相手を熱心に探しました。
収入面の不安から「再婚するならキャリアウーマン」と目標を立てました。
また性格に関しては、神経質な前妻に辟易した経験から、「おおらかで明るい、屈託のない女性」という条件をつけました。
一流企業勤務の肩書がものをいい、ほどなくしてマッチングする相手が見つかり、めでたく再婚の運びとなったのです。
私がAさんに出会ったのは再婚する少し前でした。
Aさんは会社のメンタルヘルスチェックで「高ストレス」という結果が出たため来談したのですが、ストレスの原因は仕事ではなく婚活に焦っていることとわかり、再婚成立まで度々話を聴くようになりました。
Aさんが再婚相手に望んだのは、「前妻と真逆」な女性でした。
そして幸い理想にかなった5歳年下の女性とマッチングし、カウンセリングを卒業したのでした。
再婚相手の欠点が目につくように
私がAさんと再会したのは再婚から5年近く経った時でした。
Aさんは「離婚調停を始めるところです」と苦々しげに言っていました。
私は驚いて、
「今度はすばらしい相手に巡り合えたとのことでしたが・・・何があったのですか?」
と尋ねました。
Aさんの言い分はこうでした。
妻はだらしない。掃除が嫌いでいつもあちこちに埃がたまっている。汚れを指摘すると「人間は埃じゃ死なない」と言い放つので、イライラしながらも僕がせっせと掃除をしていると「厭味ったらしい」と文句を言う。
一応ご飯は作ってくれるが、冷凍食品をチンしただけとか、仕事帰りにスーパーで買った総菜を皿に移しただけとか手抜きがひどい。前妻の手料理は、うどんも麺から手作りだったし出来合いのおかずなんて皆無だったのに。
保険会社の営業でバリバリ働くのはいいが、飲み会で遅くなることも多い。酒が好きで普段から晩酌をする。酔っ払ったまま後片付けもせずに寝てしまうのが不快でたまらない。
陽気でアクティブなところが好きだったのだが、僕が疲れている時も、やれハイキングだ旅行だと外出したがる。拒否すると家事をほっぽり出して友人と出かけてしまう。
セックス好きなのが魅力と思っていたが、僕の疲労におかまいなしにのしかかってこられるとムッとする。家事もロクにしないくせに、ベッドで足を広げてオーラルセックスを求められた時には、「ほしがるのは、やることやってからだろ」と思ってしまった。
要するに、以前は長所と愛でていた性格が、すべてひっくり返って短所に見えていたのです。
再婚当初は、神経質な前妻と較べておおらかなところがいいなと思っていたのに、
おおらか→おおざっぱ
細かいことを気にしない→気が利かない
アクティブ→遊び好き
働き者→仕事を言い訳にして家事をしない
とネガティブにとらえるようになってしまいました。
「変わったのは自分」と自覚する
Aさんにはそのことを指摘しました。
妻の性格や態度が結婚後急変したのではなく、Aさんが違う角度から妻を見るようになっただけではないか?
もともと前妻にないものを求めて妻を選んだはず。
今は前妻の方がマシだったと感じているが、仮にまた前妻と暮らしたら、今の妻の長所が見えてくるだろう。結局同じところをぐるぐる回るだけになるように思える。
Aさんはないものねだりになっていないか?
自分にとって完璧なパートナーはいない。
それは自分が相手にとって完璧でないのと同じ。
以前は好ましく思えた性格を、もう一度その頃と同じ視点から見ることは可能ではないか。
その上で、Aさんに伝えたのは、「自分の中での優先順位をつける」ということです。
前妻と今の妻と、タイプの異なる2人と暮らしてみて、自分にとって何が大事だと思えるのか。
料理の腕前、収入、飲酒の有無、セックス、趣味が合うこと、何でも構わないので、何が譲れないのか、どこが妥協できるのか、ゆっくり考えてみるのです。
せっかく縁あって再婚した相手なのに、一方的に不満を募らせて離婚となるのは何とも残念な話です。
まだ修復の余地はあると思い、調停はもうしばらく待ってはどうかと言いました。
意識してリフレーミングをしてみよう
いったんは離婚を思いとどまったAさんでしたが、1年後に協議離婚となりました。
Aさんがあまりに小言を言ったせいか、妻も態度を硬化させ、最後の方では家庭内別居になり会話もほとんどなくなったそうです。
妻は40代になり、子どもを持つならラストチャンスと考えました。
このまま気が合わないAさんといても仕方ない、次の相手を探そうと見切りをつけたのか、妻の方から離婚を申し出てきました。妻も高収入だったため財産分与等一切なしの、届け出に判を押すだけの離婚となったのでした。
Aさんは、離婚できた安堵が大きく後悔はないそうです。
また次の婚活に向けて前向きに頑張りたいと言っていました。
しかし、パートナーに向ける視線をもっと緩やかに、好意的にしない限り、また同じことが起きるのではないかと思います。
何度かお伝えしてきましたが、「リフレーミング」はとても大切な習慣です。
リフレーミングとは、物事を見る視点を変え、ポジティブな解釈を取るように努めることです。
よく言われる、「コップ1杯の水しかないと思うか、コップ1杯もあると思うか」の違いです。
息子は体育しかできない落ちこぼれ→運動神経は努力では変えられない天賦の能力である
夫は馬鹿正直にコツコツ働くだけが取り柄の人→真面目に誠実に働く夫はすばらしい人
といった考え方です。
自分の視点をちょっと変えるだけで、相手との関係性が劇的に改善することがよくあります。
いつもイライラするのは自分で自分を苦しめていることになります。
リフレーミングの効果は、相手に優しく接することができるようになるだけではなく、自分の心も穏やかに安らげるようになることだと思います。
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