結婚前に決めておくべきこと

 

私の実感として、ここ2~3年急増していると思われる夫婦関係の相談に「疲弊して不満を募らせた妻」というものがあります。

共働きはいまや夫婦世帯の半数となりました。
子どもが小学校に上がった頃からパートを始め、徐々に勤務時間を増やしているという妻も少なくないと思います。
妻には家事育児の他に外での仕事という負荷がかかり、当然専業主婦だった時期よりも忙しくなります。
しかしその分夫が家事育児を分担してくれているかというと、到底妻の負担増を補うものではないのが現状です。

これを言うと、20~30代男性は、
「それはオジサン世代のことでしょう。僕はけっこう家のことをやってますよ」
と反論します。
確かに上の世代よりは確実に家事労働に参加しているとは思いますが、それでもまだまだ足りていません。

「僕の仕事は大変なんですよ。悪いけど妻の3時間のパートとは比較にならない。家事育児を手伝う余裕は物理的にないんです」
と言う男性もいます。
労働時間はパートの方が短いかもしれませんが、外で働く以上パートも正社員も同様の責任を負います。上司や先輩に叱責されたり、接客業の場合は客に怒鳴られてヘコむことも多々あるでしょう。
妻の仕事も夫と同じように、心身ともに疲労するものだという想像力といたわりをもってほしいと思います。

 

 

家事の負担が少ない夫

中高年世代のように「ゴミ出しだけ」ではないにせよ、夫が負担している家事として多いのは、「洗濯する」「洗濯物をたたむ」「休日に掃除機をかける」です。

それだってしない人よりは、してくれる方がもちろんありがたいものです。
でも家事にはもっとたくさんの種類があります。
最近よく言われる「名もなき家事」のように、ちょっとしたことだけれどもやらねばならない小さな雑事を含めると、相当量の仕事があります。

夫が日々の料理をしているという話はあまり聞きません。
その理由として夫は、

・仕事から帰ってくるのが遅いから間に合わない
・妻の方が料理が上手だから、うまい方に任せている

と言います。
今の日本企業の体質や、通勤時間が長いこともあり、夫の帰宅時間が遅いのは仕方がないことです。
しかし「妻の方が上手だから」というのはどうかな?と思います。
毎日やれば、料理が苦手な人でもある程度はうまくなるでしょう。それはどんな仕事でも同じです。
男性だってしょっちゅう料理をすればうまくなるはずなのです。

 

 

妻の収入をアテにする夫

私が気になっていることの2つ目は、妻の収入に頼っている夫が多いことです。

妻がパートに出て10万円稼ぐようになったとします。
せっかく増えた収入ですから、子どもの大学進学資金として貯めておくなど貯金に回せれば、妻としても働きがいがあるというものです。

しかし収入が増えたとたんに夫は、「今後は食費をそれから出しておいて」「子どもの費用は任せるよ」と言って、生活費に充てさせるというのです。
子どもにかかる細かい費用は、給食費、上履きや体操着、文房具、習い事や学習塾などたくさんあります。それをいちいち夫に請求しても「出しておいて」と言われるため、仕方なく自分の給料から払っているという話をよく聞きます。

だからといって、夫が自分の給料から余剰金を貯金している気配もない。
では夫は何に遣っているのだろうか?
飲み代やゴルフに遣っているのだろうか。
教えてくれないからわからない・・・
というモヤモヤを妻は抱えています。

私は「家計簿を見せて、いちど夫婦でしっかりと家計の見直しや将来の計画を立ててみたらいかがでしょうか?」と提案するのですが、多くの妻は、
「夫は面倒くさがって『お前に任せた』『俺は住宅ローンと光熱費を払ってるだろう?生活費はお前の分担だよ』と話し合いをしてくれないんです」
とため息をつきます。

住宅ローンや光熱費などはまとまって出る大きいお金なので、たくさん払っているように見えます。
しかし、食べ盛りの子どもがいる家庭の食費はバカにならないし、日々出ていく細かいお金は合計するとけっこうな金額になっているはずです。

「私のパートでの給料:夫の給料は1:4くらいなんですが、出している費用は半々です。これっておかしくないですか?」
「私の収入は子どもにかかる費用で消えてしまい全く貯金できていません。これでは離婚もできないです」
とぼやく妻が本当に多いのです。

 

 

自分の収入を隠す夫

もう一つ私が気になることは、自分の年収を明らかにしない夫が多いことです。

「ご主人の収入を把握してますか?」
と尋ねると、
「結婚した当初に明細を見たことがあるくらいです。ここ10年は見ていません」
「『源泉徴収票を見せて』と言ったら、『どうして見せなきゃいけないんだ?』とキレられて、もう聞くのをあきらめました」
と言います。

また、夫の貯金額についても尋ねると、最近はネットバンキングを利用しており通帳がないので全くわからないということです。

夫が収入を教えないのは、何か自分の遊びのために使う余剰金を残そうとしているのではないか、と疑わざるを得ません。
しかし収入を明らかにしないのが長年の習慣になっている夫婦では、妻が頼んでも今更教えてもらえないということです。

妻の収入は知られているのに夫の稼ぎも貯金もわからない。
こんな不公平なことはない、と私は思うのです。

 

 

結婚前に婚前契約書を作る

欧米ではよく「婚前契約書」を作ると聞きます。
ハリウッドスターなどのセレブの離婚話の時に記事で読むくらいなので、一般人にはあまり関係ないのかと思っていましたが、アメリカ人と結婚した友人も交わしたと言っていました。
彼女の場合「週に1回はセックスする」という条項もあったそうです。
「結婚10年も経って、夫はそれほどしたくなさそうだし、私も正直どうでもいいんだけど、夫から義務的に誘ってくるのよ。万一離婚になった時に、セックスレスを理由に慰謝料を取られるのが恐いんでしょうね」と笑っていました。

このように、離婚時の財産分与から日常生活の細かいルールまで決めておくのが婚前契約書です。
結婚前に決めるのは縁起が悪い、ビジネスライク過ぎると、日本人にはあまり馴染まない方法かもしれません。
しかし、家庭生活において、夫より負担を多く背負う日本人女性を見ていると、若い世代の方にはぜひこのような契約書を作ってほしいと思います。

そして、お互いの収入を明らかにしておくこと。
これは最初が肝心です。夫婦が協力して家庭経営をする上で、経済面での計画をしっかり立てることはとても重要なので、隠し事をしない、させない習慣をつけておきましょう。

すでに結婚年数が長く、今更聞けないという場合でも、あきらめずに夫と話し合いの場を持ちましょう。
その際には、詳細な将来のマネープランを夫に見せ、これまでの夫の浪費を責めるのではなく、「これから家族のために頑張っていこう」という前向きな姿勢で明るい話し合いにするのです。
夫も老後の不安は少なからずあるでしょうから、次第に協力体制に入ってくれる可能性は大だと思います。

 

 

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