夫婦がすべきは競争ではなく協力

 

夫婦どちらが忙しいかを競い合う

夫婦カウンセリングでよくみられるシーンがあります。
それは夫婦間で繰り広げられる「どちらが大変か」という競争です。

例えばこんな会話が聞かれます。

妻「夫は私が不愛想だと言うけど、仕事でヘトヘトで笑顔を作る元気もないんですよ」
夫「俺だって毎日残業でヘトヘトだよ」
妻「でも私は帰宅してからご飯を作って洗濯物を取り込んで、子どものお弁当の準備もしてからやっと寝てるのよ」
夫「お前は6時には帰ってるだろ。俺は毎日9時、10時だよ、もっと大変なんだよ」

これは”どちらの仕事がより忙しいか”と忙しさをアピールし合うマウンティングです。

こんな会話もあります。

 

妻「仕事と家事育児で毎日疲れてるのよ」
夫「でもお前はパートだろ。言っちゃ悪いけど収入は俺の方がずっと多いんだから、その分こっちの方がキツいってことはわかるだろ」

正社員の夫の収入がパートの妻よりも多いのは当然です。仕事の責任や負荷も大きいことでしょう。
でも妻には家事育児というお金に換算できない仕事がたくさんあります。
妻がそれら一切を引き受けてくれているからこそ夫は仕事に集中できているのです。

きっと夫に妻への感謝がないわけではないのでしょう。
でも妻が「仕事と家事の両立が大変」とグチめいたことを言うといきなり収入の多寡を持ち出して、自分が優位に立とうとする男性がとても多いと思います。

 

女性の座れない問題

妻からすると夫の言い分は受け入れられるものではありません。

「だって私は家に帰ってから一度も座ってないんだよ？ご飯を作るのに1時間以上かかる。その間あなたはずっとソファでゲームしたりニュース見たりしてるじゃん」

このセリフを何度聞いたことでしょう。
私は「女性の座れない問題」と命名しているのですが、ほとんどの兼業主婦が抱えている苦痛ではないかと思います。
妻にこう言われると夫は「座るなとは誰も言ってないだろう？帰ったらしばらく居間で一休みすればいいじゃないか」
といとも簡単に言います。

でも休む時間が長いほど炊事が終わる時間が遅くなるのです。
それにいったん休んでしまうとますます立ち上がるのが億劫になります。スーパーのレジや販売員をしている女性は勤務中ずっと立ちっぱなしです。夕方になってむくんだ足を休めたくても、それはすべての家事を終えてからにしようと我慢して義務を優先するのです。

食事作りを「義務」と言うと男性は嫌な顔をします。
恐らく多くの男性は「女性は家族の健康のためにご飯を作ることに喜びを感じる生き物なのだ」と思いたいのでしょう。
時間や気持ちに余裕がある時はそんな気分になることもあるでしょうが、疲れているのに時間に追われながら作る料理は義務としてこなす仕事の一つでしかないと思います。

しかし長引く不景気のもと、お給料はさして上がらないのに慢性的な人手不足で過重労働を強いられている夫が疲弊しているのもまた事実です。
つまり夫婦双方が同じように大変な思いを抱えて頑張っているのです。

 

お互いをねぎらう習慣をつけよう

「どちらがよりキツいのか」という競争は不毛です。
夫婦は本来助け合い協力しあって生きていくもの。結婚当初はみなそう思っていたはずです。
それが生活に疲れていくにつれ、自分よりラクに見える相手への不満が募ってしまうのです。

これを解決する方法はシンプルです。
お互いがねぎらいの気持ちを持つこと、これだけです。

妻「お帰り、今日も遅かったね、お疲れ様」
夫「いやあ、今の部長が来てから大変だよ。でも君も繁忙期で疲れてるでしょ。いつもこんなにたくさんのおかずを作ってくれてありがとうね」
妻「今日はもう眠いから後片付けは頼んでもいい？」
夫「もちろん、先に休んでて。掃除は土曜に一緒にしよう」

といった風に、思いやりのある言葉かけを相互にするだけで疲れが少しは癒されるというものです。
”自分の方が苦労している”という不公平感をため込んで嫌味な言葉の応酬になるよりもずっと気分がいいと思いませんか？

そして、どうしても自分の負担の方が大きすぎると思う場合は、時間がある時に冷静に話し合って家事の分担を見直すことが必要になるでしょう。

ついつい「私の方が大変なのに・・・」とこぼしたくなった時には、”夫婦は競争より協力”という基本をぜひ思い出していただきたいと思います。

 

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