小さな違和感を軽視しない②

 

交際中、相手のちょっとした言動に違和感や不安を覚えることがあります。
でも盛り上がっている時期は、その程度の引っかかりをスルーして楽しさを優先させてしまうもの。
もちろんどんなに好きな相手でも他人です。生活習慣や考え方が合わずイラッとすることがあるのは当たり前。様々な違いにその都度折り合いをつけながら、なんとか相手のやり方になじみながら一緒に生きていくのが結婚生活です。

ただ、その些細な違和感が後に埋められない価値観の違いだったとわかることもあります。
これは感覚的なものなので一概にどんな違いがNGとは言いにくいのですが、いくつか参考になるケースをご紹介しましょう。

 

①稼ぐことを軽く考えている

学生時代から同棲していた彼は画家の卵でした。彼のアルバイト収入は数万円で、生活費の大半は私が稼いでいました。私は彼の才能を信じていたので彼には絵に専念してほしいと思う一方で、時々不安になることもありました。
ある日TVのドキュメンタリー番組で、貧困でやせ細っている途上国の子どもを見て「僕は絶対家族をこんな目に合わせないよ。仕事を掛け持ちして、早朝に新聞配達をしてでも稼ぐよ」と言いました。それを聞いた時”じゃあ今日から新聞配達をしたら?お金がなくて困っているのは今なんだよ?私が働いて生活できているんだよ?”と怒りが湧いたのです。

それでも彼と彼の才能を愛していた私は親の反対を押し切って結婚し、2人の子どもを産みましたが、売れない絵を描くだけで現実を見つめられない彼に絶望し離婚しました。結婚はお金がすべてじゃないと思いますが、お金の価値を理解していない人は人間として失格だったと後悔しています。

 

借金やギャンブル依存といったわかりやすいものではなく、「好きな趣味にはお金を惜しまない」とか「好きなことを仕事にするためにアルバイトしかしない」という男性は、一見魅力的な自由人に見えてしまい、経済観念が欠落していることに気づかない場合があります。自分が頑張って支えるから構わない、という懐の深い女性なら言うことはありません。しかし結婚は生活です。お金はいつか必ずケンカの種になります。最低限の収入があって初めて夢や趣味が成立するのだということを忘れないでください。

 

 

②感動のツボが合わない

5歳の息子を抱えてギリギリの生活をしていた時に出会った彼は裕福で余裕ある大人の男性でした。初婚の彼が息子とやっていけるか心配で短期間同棲したのですが、子どもの扱いもうまくこれなら大丈夫、と思い始めた頃でした。
TVで「はじめてのおつかい」を見て彼が「なんて健気でしっかりした子なんだ」と涙を流すのにびっくりしました。TVに出てくる子どもはかわいいけれど、私はああいった番組を見ると”ひとりでおつかいと言ったって、何人ものスタッフがカメラを抱えて後をつけてるわけだし・・・ひとりじゃないじゃん”と冷めた目で見てしまう方なんです。
でも感性の違いは別に構わないんですよ。私がハッとしたのは、彼が「君もあんな風にしっかり育てなきゃ」と言った言葉でした。まだよくわかりあえていない息子を、TV的に演出された子どもの姿と比較するの?という違和感でした。その時は何も言い返しませんでしたが、結婚後に彼は息子に対して無条件の愛を注げない人だということを実感し、結局離婚することになりました。

夫婦といえども他人ですから感動のツボが全く同じというわけにはいきませんが、ツボが合わないと思った時にもっと注意深く彼の性格を観察しておけばよかったと思います。

 

スマホやパソコンで本も動画も見られる現在、パートナーと好みが合わなかったら1人で見れば済むのですから、好みの違いは気にしなくてもいいのかもしれません。
でもちょっとした笑いのツボ、泣きのツボが案外、その人の根幹をなす人生観や社会観につながっているような気がします。このケースでは、パートナーが安易に「理想の子ども像」をこの女性に押し付けてきたことに不快感があったわけです。その時点で気持ちを伝え子育てについて話し合っておけば彼の考え方も変わったのかもしれません。
しかしこのケースに限らず多くの方が、泣き笑いのツボは相性を示唆する重要ポイントであると話しているのです。

 

 

③社会に対して冷たい

私が交際中にずっと気になっていたのは彼の社会に対する冷たさでした。
「自己責任」という言葉が好きで、リーマンショックや天災で行き場を失った人に対し「日頃から貯金していたら急に路頭に迷ったりしないよ。地道に努力してなかったんだから自業自得だ」と言い放ちます。引きこもりの子どもの報道には「いじめくらいで不登校なんて甘えだ」、うつ病で休職した同僚に対して「心が弱いんだよ。会社には不要な人材だから辞めればいい」といった具合に、弱い立場の人間への批判が厳しいのです。私に対しては優しいのですが、彼の心の底に何か冷たいものが流れているような予感はありました。
別れる理由もなくそのまま結婚しましたが、最近もニュースを見ながらコロナで失業した人達に「たかが1、2か月でもう光熱費も払えないなんて、なんで貯金してないんだよ」と非難しています。そうしたくてもできない人がいるという視点が欠けているのです。聞いていると不愉快でゲンナリしますが言い返すのも面倒で黙っています。
今後子どもが学業や仕事に挫折した時に、落伍者として切り捨てるのかな、と漠然とした不安を感じます。

 

これはよくあるケースだと思います。彼は地道に努力し地位を築き上げてきた方なのでしょう。あるいは彼自身が何かストレスを抱えていて、それを発散する対象が社会的に困難な立場にある人になっているのかもしれません。聞く方は不快ですが、注意しても聞いてくれない場合は「そういう考え方を私はいいと思えない」とはっきり伝えて別室に行き、聞かないようにするといいでしょう。そして話し合えそうな余裕がある時に「私はこう思っているけど間違ってるかな?」と冷静に伝えることで、相手の凝り固まった考え方を変化させることができるかもしれません。

 

④セックスに好奇心がない

彼にとって私は3人目の交際相手だったそうですが、彼が性的な面で淡泊であることはすぐわかりました。もちろん時々行為はしたけれど、愛撫や手順がいつも同じで工夫がなく、正直すごく楽しいという感じではありませんでした。でも性欲がないわけでもEDでもないのだし、それほど気にしてはいなかったのです。
ある日セックスレスで離婚した友人の話をすると彼は「たかがセックスで?バカだよね、条件のいい相手だったのに」と笑ったのです。「たかがセックス」という表現に何か不快なものを感じてモヤモヤしました。でも私の中にもセックスは最優先するものではないという考えがあり、彼と結婚を決めました。
今結婚5年ですが、セックスは数回もなく、この2年は1回もしていません。いま離婚を真剣に考えています。カウンセリングで「結婚したらなんとかなる、はあり得ない」と先生に言われて本当にその通りだったとかみしめています。

 

テクニックは希望を伝えあうことで向上します。ただ欲求の強弱には生まれながらの個人差があると思います。お互いが折り合いをつけながら努力すればその差はある程度埋まるでしょうが、あまりにも大きな違いがあった場合はパートナーで満足することが難しくなるかもしれません。だからこそ結婚前に、したくなるタイミング、新しいことを試そうとする好奇心、パートナーを喜ばせたいというサービス精神などの波長が合っているか、よく考えることが大切になります。

 

⑤潔癖症

彼はいつも除菌シートを持参しレストランのテーブルや映画館のひじ掛けを拭くなど、衛生に神経質なところがありました。それは悪いことではないけれど、ひとつ不安だったのは愛猫を連れていけるかということでした。ペットを飼ったことのない彼が、高価な家具が整った清潔なマンションに私たちを迎え入れてくれるのか。でも彼は「慣れてないけど君の大事なものは受け入れるよ」と言ってくれたので結婚を決めました。
彼も慣れようと努力してくれたのは認めますが、動物特有の匂いや床に落ちる毛、部屋にトイレを置くことなどがどうしても耐えられなかったようです。いつも不機嫌に「きれいにしてくれよ!」と小言を言い、私が不在中は物置部屋に猫を押し込めて出さないようになりました。
動物の好き嫌いの問題以上に、彼は自分の生活様式や価値観を変えたくない人なのだということがわかり、傷は浅いうちに、と半年で離婚しました。

 

ペットを受け入れるか否かは大きな問題ですが、そうでなくてもパートナーの潔癖は男女を問わず苦労している人が多いようです。

・僕が廊下を裸足で歩いただけで妻は悲鳴を上げて雑巾がけをする。僕はそんなに汚いのか?

・僕の母が握ったおにぎりを妻は気持ち悪がって食べない。母を侮辱された気分になる。

・妻は不衛生だからとオーラルセックスを断固拒否する。正直セックスがつまらない。

こういったグチをよく聞きます。

性格だから仕方ないと許容できる範囲のことであればいいのですが、その潔癖さに怒りや嫌悪を感じるほどにイライラが募るのであれば危険信号。
潔癖は結婚前にある程度分かると思います。自分の感覚と違い過ぎていないか、よく見極めてください。

 

小さな違和感を軽視しない①はこちら

 

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