嫌悪感には理由がある

 

 

性に積極的な女性が苦手な男性

ほとんどの男性にとって、性行為でパートナーの女性が官能しているのを見ることは、男としての自信や達成感につながると思います。

しかし時々、「女性が反応することに抵抗感がある」という男性にお目にかかります。

女性が性に積極的なのを嫌がる男性には2つのパターンがあります。

 

亭主関白タイプ

1つは昔ながらの亭主関白タイプで、比較的年齢の高い男性にみられます。
セックスの主体はあくまで男性であり、女性はたとえ快感があっても恥じらってほしい、あまり表現をしない奥ゆかしい方がいい、という考えです。

 

経験が浅いタイプ

もう1つは、セックスに自信のない経験の浅い男性です。
女性の方が経験豊富だとバカにされるんじゃないか、自分では物足りなくてフラれるんじゃないかという不安があり、女性から大胆にこられるとビクついてしまいます。
こういった男性なら性経験を積んで自信がつけば、落ち着いて女性の反応を楽しむことができるようになるでしょう。

 

しかしこのような女性に対する偏見や引け目があるわけではないのに、女性が快感を得ることに嫌悪感を持つケースがあります。
これには性行為以外の日常生活での不満が関係しているのです。

ひとつの典型例をご紹介します。
(ご相談内容は個人が特定できないよう変更を加えてあります)

 

性嫌悪の原因は日常での不満

Sさん(45)は結婚20年目、妻(45)とはセックスレス8年。
妻からは何度も要求がありましたが、SさんはEDを理由に誘いを断っていました。
妻に受診を勧められても仕事が忙しいと言って放置したままでした。

しかし妻は更年期なのか最近機嫌が悪く、「このままセックスがないなら別れよう」と突然切り出されたということで、慌てて来談したのでした。

「妻を嫌いなわけではないのですが、どうもその気になれなくて」

「男女というより家族になっちゃって、性欲が湧かなくて」

これはよくある話です。
しかしSさん話をよく聞いていると、性欲が湧かないというよりも、性行為の最中の妻の反応がうっとうしくてその気にならなくなったということでした。

潮「うっとうしいとはどういうことでしょうか?」
Sさん「自分は元々それほど性欲が強い方ではなかったけれど、以前はごく普通にできていました。妻も特別したい方でもなく、バランスが取れていたはずなんです。
でも、いつの間にか妻が控えめながらも反応し喘いだり体をくねらせたりするようになりました。
それを見て、漠然と嫌悪感を覚えている自分に気づきました。
妻をそんな冷たい目で見ていることに罪悪感があり、気を紛らわせようと頑張るのですが、いったん気になると萎えてしまい、本当にED状態になったのです」

潮「長い夫婦生活はいいことばかりではありません。相手の欠点が目についたり疎ましく思う時期もあるのは当然です。何かSさんの中で許せない奥様の行動があったのでしょうか?」

しかしSさんがすぐに思いあたることはありませんでした。

しかし次に来談した時にSさんは、
「妻が仕事を辞めなかったことかな・・・」
とつぶやきました。

奥様はいわゆるキャリアウーマンで、出産後もベビーシッターを雇ってすぐに職場復帰しました。職場が家から近かったので、昼休みには帰宅し母乳を飲ませるなど子育ても手を抜かず、夜は家事をきちんとこなすスーパーレディだったそうです。

Sさん「仕事を辞めてほしいとは思わなかったが、本心ではそこまで頑張る姿がイヤだったのかもしれない。せめて赤ん坊の時くらいは家にいればいいのに、と思いました。自分も忙しく子育てを手伝わなかったから何も言えなかったけど」

Sさんは頑張る妻を偉いと思っていたし、自分がそれほど不満に感じているという意識はなかったようです。
しかし実は、セックスを拒否したり嫌悪を感じたりすることで、自分の意に沿わない行動をするパートナーへの“復讐”をするという行動は、よくあることなのです。

 

Sんは、嫌悪を感じ始めた当初はまだなんとか行為を続けていました。
しかし、仕事と家事育児の両立でヘトヘトのはずの妻が、セックスの最中に気持ちよさそうに悶えるのを見るとゲンナリしてしまったそうです。

Sさん「セックスまで頑張らなくてもいいじゃないか、なんでも手に入れたい欲張りな女だな、そういう気分になっていたのかもしれません。自分が女性の自立にこれほど理解のない人間だとは思っていませんでしたが・・・完璧な妻が息苦しかったのかな。それともデキる妻への嫉妬だったのか・・・」

 

性嫌悪を感じたら日常を見つめ直す

原因に思い当たったところで、もう大丈夫とはいかないのがセックスの難しいところです。

そこで多少の嫌悪感があっても仕方ないと割り切って、義務感でもいいからとりあえずセックスを再開してみることを宿題としました。

ただし妻を傷つけないように、嫌悪感のことは決して話さないこと。あくまでマンネリと疲れのせいで性欲が低下していたことにして、久々の再開は緊張しぎこちなくなるだろうがそれは仕方ないので、とりあえず最後までやり抜くようにお伝えしました。

原因がなんとなくわかったことでSさんは前向きな気持ちになれました。
「積極的に、とはまだいきませんが、まあ大切な義務としてやってみます」
とレス解消に向けて頑張る姿勢を見せていました。

 

 

これは決してレアケースではありません。

妻が口うるさく夫の行動を批判するタイプだというある男性は、
「セックスの最中だけ女に変貌する妻に怒りを覚えた」
と言っていましたし、
十年間うつ病を患い自宅療養中の妻を持つ男性は、
「さっきまでぐったりしていた妻が身をくねらせて感じているのが腹立たしくて、挿入してやるもんか、という意地悪な気持ちになってしまうんです」
と語っていました。

セックスはコミュニケーション手段のひとつです。お互い本音を出せずコミュニケーション不全になっている時に、セックスだけ切り離して楽しめるはずもありません。

セックスが楽しくなくなったと気づいた時には、日常の関係性全体を見つめ直してみることが必要だと思います。

 

 

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